こんにちは、培養部です。
梅雨がやっと開けましたね!
突然ですが皆様は不育症についてご存じでしょうか?
聞いたことがある方も多いかと思いますが、今回は不育症についてお話しようと思います。
不育症とは、単一の診断名ではなく、複数の病態を含んだ総称になります。
妊娠はするけれど流産や死産を繰り返し、なかなか出産までたどり着けない場合に不育症と診断されます。
※一般的に妊娠反応は陽性ですが、胎嚢が見えずに終わる生化学的妊娠(化学流産)は現在のところ流産回数には含まれません。
2回以上流産(妊娠22週未満)を繰り返した場合は『反復流産』。
3回以上流産を繰り返した場合には『習慣流産』と呼ばれます。
不育症の多くは特に妊娠12週未満の初期に流産が発生しやすいという特徴がみられます。
自然流産は珍しいことではなく、年齢にもよりますが妊娠した方の10~15%に起こり、
初期流産の原因の50~70%は受精卵の偶発的な染色体異常によるものとされています。
しかし2回以上続く場合は、偶発的なもののほかに、夫婦いずれかに何らかの原因がある可能性も否定できません。
少なくとも2回以上流産を経験された方は、積極的な検査・治療・管理をおすすめします。
不育症の原因は多岐にわたるため、流産のタイミングやパターンのみから原因を推定することは困難です。
そのため不育症を診断するためには網羅的な検査を行う必要があります。
具体的な検査(要因)としましては、大きく分けて5つあり、
①内分泌(ホルモン)検査、②子宮の形を評価する子宮の形態検査、③自分の体に対する抗体を調べる自己抗体検査、④血の固まりやすさを調べる凝固系検査、⑤夫婦の染色体検査があります。
1)内分泌検査(血液検査)
甲状腺機能、下垂体ホルモン、卵巣ホルモンについて調べます。
これにより、着床やその後の妊娠の継続に必要な黄体ホルモン(プロゲステロン)が足りているか、
母乳や生理の調節に関係するホルモン(プロラクチン)が高くないなどが分かります。
また、糖尿病の有無・耐糖能異常についても調べることがあります。
2)子宮形態検査(内視鏡・X線造影)
子宮内に影響を及ぼす筋腫や子宮の形の異常の有無を検査します。
内視鏡を用いて子宮の中を観察する『子宮鏡検査』と造影剤を子宮の中に入れてレントゲンで撮影することにより子宮の中の状態と卵管の通過性を評価する『子宮卵管造影検査』があります。
3)自己抗体検査(血液検査)
自己抗体は自分の体に対する抗体で様々なものがあり、種類によっては血液を固まりやすくさせるものがあります。
血液が固まることによって小さな血栓ができ、それが原因で流産が起きやすいと考えられています。
代表的なものとしては抗リン脂質抗体があります。
4)凝固系検査(血液検査)
血液が固まりやすくなっているか(凝固性の亢進)、血液を固める物質(凝固因子)がどのくらいあるのか、といったことを調べます。
5)染色体検査(血液検査)
ご夫婦それぞれの染色体の数や状態を調べます。その結果、流産しやすい染色体の状態なのかが判明します。
ただし、残念ながら現時点ではそれに対して有効な治療法はありません。
何度か繰り返すうちに確率的に無事出産にいたる可能性もあります。
あまり知られていなかった不育症の存在も最近では徐々にその認識が広まりつつあります。
不育症に関する検査・治療の助成金事業を鹿児島市は開始しており、
そのため鹿児島市内在住の方限定にはなりますが、当院で行っている検査・治療内容が一部助成される場合があります。
医療保険が適用されない不育症治療などと、助成の対象が決まっておりますのでご注意ください。
詳しい検査項目や内容・助成金についてなどは当院でご説明もできますので、お気軽にご相談ください。