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医院ブログ

喫煙と不妊治療・喫煙と妊娠について②

こんにちは。

徳永産婦人科 培養室です。

今回は前回(喫煙と不妊治療・喫煙と妊娠について①)の続きになります。🌱

 

 

 

【喫煙と妊娠】

タバコの煙には、一酸化炭素、ニコチン、タールをはじめ4000種類以上の化学物質が含まれており、その内の200種類以上が人体に有害で約60種類に発癌性が認められています。喫煙や受動喫煙によって妊婦の体内に流入したこれらの化学物質は、胎盤を通過して胎児に移行し、様々な障害を引き起こします。

 

◆◇妊婦自身の喫煙が胎児に及ぼす影響◇◆

・出生体重の減少

・将来肥満になる率が高い

・奇形の原因となる可能性

・胎盤機能の低下

・胎児の脳を傷つける

 

(⋆上記の理由⋆)

ニコチンの作用で胎盤、臍帯や胎児の血管が収縮して血流が減少し、胎児への酸素や栄養の供給が低下します。また、高濃度の一酸化炭素が胎児血中に移行するため、胎児は更に酸素欠乏状態に陥ります。その為、胎児の成長が阻害されて子宮内発育遅延(IUGR)が起きやすくなり、出生体重が減少します。*¹

 

胎児期の低栄養状態は出生後のインスリン抵抗性、脂質異常、高血圧などを招く要因になるといわれ、生まれた子どもは将来肥満になる率が高いと報告されています。*¹ *³

 

妊婦の喫煙と胎児の奇形との関連については多数の研究があり、水頭症、無脳症、二分脊椎、口唇口蓋裂、心室中隔欠損、尿路奇形、足の内反・外反変形等との関連を指摘されています。特に胎児に重要な器官が形成される胚芽期(妊娠第3~8週)にタバコによる健康被害を胎児がうけると奇形の原因となる可能性があります。*¹

 

前置胎盤や胎盤早期剥離の頻度が高く、妊娠合併症や早産、死産の増加に繋がり、病理学的にも喫煙をされている妊婦の胎盤には梗塞や石灰化、壊死巣が多く、絨毛の低形成線維化もみられ、胎盤機能が低下するとされています。*¹

 

妊婦の喫煙の最も深刻な害の1つは、胎児の脳を傷つけることです。

喫煙をされる妊婦から生まれた子どもは、喫煙をしない妊婦から生まれた子どもに比べて知能発達の面で劣ると報告されており、小児期の知能指数にして4~6ポイント低下するともいわれています。

知能への悪影響は成人後までも残るとの報告もあり、近年では注意欠陥/多動性障害(ADHD)を発症する率が2~3倍に増加するとの報告も相次いでいます。*¹

 

◆◇妊婦の受動喫煙が胎児に及ぼす影響◇◆

妊婦の受動喫煙が胎児に及ばす悪影響は、妊婦自身の喫煙による悪影響と基本的には同質で、その程度が軽くなったものです。

受動喫煙に晒された際に、タバコ煙中の化学物質がどの程度妊婦の体内に流入し、胎盤を通過してどの程度胎児に移行するのかによって、胎児が受ける障害の程度が決まります。

 

具体的なデータとして妊婦の受動喫煙が出生体重に及ぼす影響について調査した研究の多くで、子宮内発育遅延や低出生体重児の割合が20~90%増加することが観察されており、出生体重は20~200ℊ減少すると報告されています。報告値に大きな幅があるのは、タバコの煙に晒される部屋の広さや換気の条件が異なるためと考えられています。*¹

 

これらのデータにみられる程度の体重減少は、元々リスクの低い新生児に対してはほとんど臨床的悪影響をもたらすことはないと考えられますが、元々リスクを抱えた新生児にとっては、よりハイリスクになりえるため、本来予防できたはずの新生児死亡や精神発達遅滞、脳性麻痺などを多数発生させる原因にもなりかねません。また、妊婦の受動喫煙によって、胎児の血中リンパ球に発癌関連遺伝子異常が増加するとの報告もあります。*¹

 

喫煙が胎児に引き起こす疾患が受動喫煙によっても生じるか否かについては、まだ研究が少なく明らかではありません。しかしながら、これまで述べてきたように、受動喫煙させられた際に胎児に流入する有害物質の量は、自ら喫煙する場合の数分の一のレベルに達することが確認されており、その危険性は大きいといえます。*¹

 

 

◆◇加熱式タバコなら大丈夫なのか?◇◆

加熱式タバコとはiQOSなどのタバコの葉を電気で加熱し蒸気を発生させ、ニコチンを吸い込むものです。紙巻煙草とは違い、タールは含まれていませんが、タールとはまた別の成分が入っており、それが精子に悪い影響を与えている可能性は大いにあります。

 

中には、発がん性物質や有害物質は従来のタバコより少なく、たばこ関連の疾患リスクを減らす研究論文を出しているところもあります。しかし、アメリカではタバコの加熱式フィルターから加熱時に有害物質が発生していることが報告されています。

総合的にみて、実際の健康被害はどうなのか?といわれるとまだ研究段階であるため、結局どれほどの影響があるのかははっきりお伝えできません。ただ、有害物質の一部は従来のタバコと同様に含まれていますので、少なくともiCOSだから大丈夫ということにはならないと考えられます。*²

 

以下、論文内にありましたiQOSと紙タバコの主流煙に含まれている物質の表です。*²

表からも分かるように1ℊあたりのニコチン量は紙タバコもiQOSもあまり変化がみられません。

 

また前々回に葉酸のブログをあげましたが、

葉酸を摂取していたとしても喫煙することで、葉酸が大量に消費され低葉酸状態になるリスクがあります。

 

タバコに含まれるニコチン・タールなどの有害物質は肝臓で代謝されます。肝臓での代謝は葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12が使われ、一酸化炭素の処理もあわせて多くの葉酸が消費されます。そのため、体内で赤血球が増えず、更にタバコの有害物質が血管を収縮させる→赤血球が不足し、血流が悪くなる→栄養と酸素が全身の細胞や胎児に行き渡らない。という悪循環を迎えます。

 

葉酸サプリメントの中には、過剰摂取すると身体に良くない作用が出る脂溶性ビタミンが含まれていることが多いので、タバコで不足する分を補おうと決められた量以上に摂取してしまうのは御法度です。更に1日に1000㎍以上摂取すると妊婦本人の健康を損なったり、赤ちゃんに影響が及んだりする可能性も指摘されています。葉酸サプリでタバコの害は消せません。葉酸はサプリメントで補うのも限界があるため、赤ちゃんの為にもせめて授乳が終わるまでは禁煙することが大切です。

 

喫煙者にとって、禁煙することは大変辛いことであると思いますが、どちらか一方が喫煙者であれば、その隣にいる大切なパートナーもまた受動喫煙者として体内に影響を及ぼしてしまう可能性があります。

 

今回のブログが皆様の未来の為にも、禁煙に向けて前向きな一歩になるきっかけにほんの少しでもなれれば幸いです。

 

 

 

 

 

 

 

 

参考文献
*¹:加治正行 『妊婦の受動喫煙と胎児、子どもへの影響』禁煙科学 4巻(2010)-03-P1-5
*²: K BEKKI et al. (2017) Comparison of Chemicals in Mainstream Smoke in Heat-not-burn Tobacco and Combustion Cigarettes. J UOEH 39 (3):201-207
*³:鈴木孝太、山縣然太郎『妊婦の喫煙が胎児発育、子どもの発育に与える影響の検討』禁煙科学 6巻(2012)-07-P1-3
・厚生労働省 女性の喫煙・受動喫煙の状況と、妊娠出産などへの影響
Werler,M.M.(01 Jun 1997) Teratogen update: Smoking and reproductive outcomes. , 55:382-388 

 

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